VersaWorks 7開発ストーリー 第一部PROJECT STORY 02

第一部

「MacOS対応」への期待と「UI刷新」への機運が、
VersaWorks史上初の挑戦につながった
ローランド ディー.ジー.製インクジェットプリンターの性能を最大限に引き出し、ユーザーのクリエイティビティを支えてきたRIPソフト「VersaWorks」。長年にわたり多くのプロフェッショナルに愛用されてきたこのソフトウェアも、移り変わる時代のニーズとともに新たな課題に直面していた。この状況を打開するべく、最新版となる「VersaWorks 7」開発プロジェクトの陣頭指揮を執ったのが、DP事業部 開発2部のY.A.だった。

Y.A.このプロジェクトが始まる少し前から、我々開発部の中で大きな課題になっていたのが、これまで長年にわたって積み重ねてきた「VersaWorks」のソースコードが限界を迎えつつあったことでした。

RIPソフトは、クリエイターが作った画像データをプリンターが処理できるデータに変換するソフトウェアで、特に処理する情報が膨大になる大型・多機能プリンターでは、印刷の精度やスピードを大きく左右する。そのため、ローランド ディー.ジー.では自社製プリンターを使用するためのRIPソフトを自ら開発することでノウハウを蓄積し、ハード・ソフトの両輪で最高のデジタルプリントソリューションをユーザーに提供してきた。

Y.A.一方で、ソフトウェアの場合はこうした積み重ねが時に足かせとなることもあります。VersaWorksもアップデートのたびに機能を追加することでソースコードは複雑になり、開発のスピードや、ユーザーインターフェース(UI)の設計にも影響を与えつつありました。開発部内でも“なんとかしたい”という声が高まる中でスタートしたのが、「VersaWorks 7」のプロジェクトだったんです。

企画に当たり、Y.A.はまず共にVersaWorksの開発に当たってきたT.K.やY.N.、K.K.に声をかけ、大きなボードにVersaWorksに対する想いや理想、課題などを付箋で貼り付けながら開発の方向性を探っていった。
後に開発リーダーを務めたT.K.は、当時についてこう振り返る。

T.K.もともと、VersaWorks6でやり残していたと感じていたことや課題が自分たちの中であったので、議論は白熱しましたね。

Y.N.開発のタイミング的にも、近々「VersaWorks 7」の開発が始まるだろうなという予感がありました。そうした背景もあって、ボードがすぐに付箋でいっぱいになったのを覚えています。それこそ何十枚もある中から、「これは入れたい」「これはまだ先でいいかな」と絞り込んでいったんです。

その中で特に強く浮上してきたのが、「Mac対応」の必要性だった。印刷業界ではWindowsが主流だが、デザイン・アート分野ではMacユーザーが多い。こうしたユーザーはこれまで、Macで作ったデータをWindowsに移し替えて出力するなど、さまざまな工夫を強いられていた。

K.K.私は入社して10年くらいたつのですが、当時からMacへの対応は課題としてありました。ただ、技術的な制約やさまざまな新機能の開発が優先される中で、悲願を果たせずにいたんです。

Y.A.実際、Macユーザーには、プリンターが対応していないので、仕方なくWindows“も”使っている、という方も少なくなかったと思います。これはデジタルプリント業界全体にも言えることだったのですが、それだけにMacだけでプリントを完結できるVersaWorksを実現すれば、大きな価値が提供できるという確信がありました。
また、ソースコードの見直しやUIの刷新は僕らにとって強い思い入れがあったのですが、ユーザー目線ではベネフィットがわかりにくいという懸念もありました。そこで、難しい判断ではありましたが、企画のもう一つの目玉として“Mac対応”を盛り込む決意を固めたんです。

さらに、Y.A.はヨーロッパの子会社をまとめているホールディング会社「EHO」を通じてSaaSビジネスに詳しいP氏たちと協議を重ね、将来的なソフトウェアサービスの展開も見据えた製品構想を具体化していった。

Y.A.当初は開発部の想いが強いあまり、「VersaWorks 7」を銘打つにはインパクトが足りないと悩んだ時期もありました。しかし、こうして部内の仲間や、クラウドサービスであるRoland DG Connectをすでに手掛けていたSaaSチームと力を合わせることで、“Windows/Macの両OSにネイティブ対応”し、“VersaWorksの使い勝手を引き継ぎながらもUI・ソースコードを刷新”、さらに“将来的にSaaSに対応”するための布石を打つ」という、これまでにない思い切った製品コンセプトをまとめることができたのです。