VersaWorks 7開発ストーリー 第三部PROJECT STORY 02

第三部

「果たして間に合うのか…?」
チーム一丸で乗り切った開発終盤
VersaWorks 7の開発にあたって、最大の難所となったのがスケジュールだった。Mac対応をはじめ、初めてづくしの開発とあって予測できないロスが積み重なっていたのだ。さらに……

Y.A.もともとそれほど楽観的なスケジュールではなかったのですが、それでも当初は、見通しは立っていました。ところが、Mac対応などで思いのほか時間がかかったことなどから、開発中盤にかけて「もしかしたら、ちょっと時間が足りないんじゃないか」という不安がわき上がってきたんです。

そこでT.K.が残タスクと残日数を洗い出したところ──。

T.K.残っている作業をすべて可視化してみたら、さすがに冷や汗が流れました。残された時間内でどうやって効率的に仕事を進めるか、改めて全員で考えました。とにかく開発のスピードと質を両立させなければならない状況でしたね。

前章でも触れたように、この時期に加入したW.Y.にとっては、開発が最も混み合う“佳境”への突入でもあった。当時を振り返って、彼は苦笑する。

W.Y.入社してすぐ、“半年後にリリースです。Macにも対応します”って言われて。でもまだこの職場のことを何も知らないですから、佳境という感覚はなかったんです。でも、ある時これは…と思ってY.A.さんに聞いたんですね、“今どのくらいの忙しさなんですか”って。そうしたら、返ってきた答が“自分が経験した中で一番”(笑)。

そんな状況ではあったが、経験のあるY.A.とT.K.が後輩たちをサポートし、チームに混乱はなかった。そこにはチームワークという、ローランド ディー.ジー.の開発文化が根付いていたからだ。

Y.N.慣れないMac環境で、動くはずのものが動かないなんてことは日常茶飯事でした。そんな中で、二人の新人はもちろん、ここにはいないけど評価チームの面々など、仲間には本当に助けられましたね。

ローランド ディー.ジー.では、一般的なソフトハウスのように他者のためのソフトを開発するのでも、自社で使うソフトを他社に外注するのでもなく、自社製品のためのソフトウェアを自社で開発している。だからこそ意思疎通はスムーズで、仕事への熱量も一緒。“チーム一丸”という言葉が、まさに具現化されていた。

K.K.チーム内の連携力は本当に大きかったと思います。また、自分たちがコツコツ残してきた資料や標準化のための設計方針が、若手メンバーの理解を助けてくれた。いつか役立つと思って地道に整備してきたものが、こうして活用してもらえて、やっと日の目を見た。そんなうれしさもありました。

Y.A.またEHOとは、SaaSビジネスの視点で何度もやり取りを重ねました。社内に説明する際にも、彼らの業界知識が非常に役立ちました。開発中はインドにある協力会社からも技術者仲間が支援してくれて、海外拠点のメンバーとの連携も思い出深いです。

こうして社内の力を結集する中で、さらにチームに力を与えてくれたのが、新しい技術に取り組む“楽しさ”だった。

T.H.たしかにプレッシャーもありましたけど、新しい技術に触れて、自分が関わった機能がちゃんと動いた時はうれしかったですね。皆さんの品質に対するこだわりについても、改めて学ぶところが大きかったと思います。ものづくりに携わるエンジニアとしても、一歩前に進めた実感がありました。

W.Y.自分視点になってしまいますが、クロスプラットフォームやMac環境の扱いは、最初は未知の世界でしたけど、“こんな新しい技術に触れられるなんて”という前向きな気持ちで取り組めました。忙しさより、学ぶチャンスをもらったという思いのほうが強かったです。

Y.N.あと、終盤になって導入したAIのサポートプログラミング。あれもかなり助けになりましたよね。最初は新しもの好きが高じて導入したような形でしたが、会社もすぐに承認してくれて、みんな一斉に使うようになった。私も楽しみながら研究していましたが、そうして得た知識をチーム内で共有することでみんながAIを使いこなせるようになる、そうしたことを意識していました。

Y.A.は振り返る。

Y.A.最後まで走りきれたのは、やっぱりこのチームだからこそ。技術も、人柄も、お互いに信頼できる仲間たちと一緒にできたから、なんとか無事にリリース日を迎えられたのだと思っています。