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こうしてかつてない新機軸を取り入れたことで、「VersaUV LEF-12i」に対して、幅で-231mm・重さで-24㎏というコンパクトサイズを実現したME08。 しかし、ME08での「初めて」はそれだけではなかった。当時の心境をS.M.はこう振り返る。
(S.M.)私はちょうど育休明けで、復帰早々にチーフに抜擢していただいたので、ME08は「最後までやり遂げるぞ」と強い意気込みで当たったプロジェクトでした。とは言え、先ほどE.T.さんの話にあったように、ME08はプリンターの胆であるプリントヘッドや昇降装置などの主要システムが既存のものだったので、ハードウェア(エレキ)としてはある程度見通しがついており、懸念したのは配線の取り廻しが大変そうといったことくらい。
と、当初はかなり楽観的だったという。ところが開発が進むにつれて、さまざまな相談事がS.M.に寄せられるようになってきた。
(S.M.)ハードウェア(エレキ)“あるある”なんですけれども(笑)、開発を進めていくと機能追加の要望が出てくることが多いんですよね。先ほど話題に上ったモーターの件もそうですし、何より予想外の出来事だったのが、開発途中で安全に関する国際規格が変わり、さまざまな対策や設計変更が生じたことでした。
この安全規格はIEC/EN-62368-1というもので、人体への傷害を防ぐ「ハザード・ベース・セーフティ・エンジニアリング(HBSE)」という概念をもとに規定されている。開発中の2020年の12月に従来の規格が強制的に失効されることになり、新たな安全装置の追加や試験の導入が必要になったのだ。 そこで登場するのが、このプロジェクトが「初」のチーフ経験となったソフトウェア設計担当のK.S.だ。いわゆるファームウェア──機体のあらゆる機能を設計し、その動きを司るプログラム──を作成するのが役割である。
(K.S.)当社の製品は人が操作して動かすものなので、安全性に関してもノウハウがあります。たとえばUVランプを使っている機体では、紫外光が直接人体に当たらないようにしなければいけないので、動作中に誤ってカバーを開けられてしまったら、紫外光が作業者の目に入らないよう、即座にランプをオフにするとか、プリントヘッドが動作中なら止めるとか。そのあたりがソフトウェア(ファーム)の制御になります。
(S.M.)まず新しい規格を読み込んで解釈しないと、設計に反映できない。資料は英語ですし、まずそこがひとつめの山場でしたね。
(K.S.)そして新規格が求める安全性を担保していくわけですが、新規格では誤ってプリントヘッドに指を挟んだ場合に骨折などの危険が生じるかどうかを検証する必要がありました。
緊急停止スイッチの取付場所をめぐっても多くの議論と検討・検証が行われた。加えて、K.S.にはもうひとつの「初」挑戦があった。
(K.S.)ソフトウェア(ファーム)としては、「フラットベッド」型のプリンターに必要な制御、機能を全て追加していく必要があるのが一番のチャレンジでした。というのも、本来は資産として使えるはずのソースコードが、大型インクジェットプリンタのロール機をベースに作られていたためです。
繰り返しになるが、今回のME08はフラットベッド以外の主な機構を従来製品から引き継いでいるため、機体の動きや制御の面から見ると、それほど大きな違いはない。
(K.S.)当社にはこれまでのさまざまなプリンターで使われてきた制御プログラムがありますので、それを取捨選択しながら組み合わせ、機体に合わせて完成度を高めていくのが、通常のソフトウェア(ファーム)担当の役割なんです。
ところが、実は数年前に当社製品で使われているメインボードの大規模な世代交代があり、それ以前のソースコードが使えなくなっていた。スマホで言えば、AndroidとiOSで使えるアプリが異なるようなものである。
(K.S.)そして運の悪いことに(笑)、フラットベッド機で新しいメインボードを使うのはME08が初めて。僕がチーフになる以前から進めていてくださっていた方がいたこと、ソフトウェア(ファーム)設計チームのみんなが力を貸してくれたこと、量産直前まで調整に付き合ってくれた生産技術の方がいたこと、それらがなければ、期限内の開発は無理だったでしょう。改めて、仲間の頼もしさを感じるプロジェクトでした。