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【第4部】

開発を終えて

こうしてさまざまな困難を経て完成したコードネームME08は、最後の役員承認を経て、正式に「VersaSTUDIO BD-8」と名付けられた。まず2024年1月に米国市場で先行リリースし、続く3月には日本をはじめとする世界各地域で販売開始。滑り出しは上々だ。各地の販売スタッフを通じて掴んだ手応えを、A.S.は次のように語る。

(A.S.)販売パートナーから寄せられた情報ですが、お客様からの注目度も高く、これまでとは異なる顧客層にアプローチできているとのコメントをいただいています。当初の販売目標もクリアしていますね。まだ判断するのは時期尚早かもしれませんが、今の時点ではトラブルの話も聞いていませんし、上位機種の高い信頼性を引き継いでいるモデルなので、営業も自信をもってお客様にお勧めできると言っています。

(E.T.)「VersaSTUDIO BD-8」は、開発期間は短いながらも、本当に細かいところまでこだわったモデルです。ここでは詳しくは触れられませんでしたが、プリントヘッドのクリーニング機構や、機体ごとの製造公差の最小化、インク詰まりとインク消費量をギリギリまで低減する噴射制御など、メカ・ハード・ソフトが協力して競合製品を圧倒する使いやすさと高性能を両立したという自負があります。A.S.さんが聞いてきてくれた「営業が自信をもって売れる」という声は、開発者にとってお客様のお褒めの声と同じくらい嬉しいですね。

またコンパクトで初心者にも使いやすいという「VersaSTUDIO BD-8」の特性はローランド ディー.ジー.社員による活躍にもつながっており、採用イベントで人事部門が学生に向けたデモンストレーションを行ったり、社内プロジェクトで社員向けのグッズを製作したりと、幅広い広がりを見せている。

(A.S.)展示会でも好評で、大学や高専、教育機関などからも商談や見積り依頼をいただいているそうですよ。

(E.T.)近い将来、学生時代に「VersaSTUDIO BD-8」を使ったことが当社に注目するきっかけになった、という新入社員が現れるかもしれませんね。

開発プロジェクトを終えて、彼らの胸に去来する思いは何だろう。

(E.T.)製品開発では全てを実現することは不可能だけど、誰かが納得できないことや疑問を残したまま、便宜的に妥協して先に進むという解決法はローランド ディー.ジー.にはない。いろいろ課題に直面もしたけれど、メンバーのアイデアを尽くして最適解に近い開発ができたかなという満足感はあります。

(A.S.)そうですね。私たち作り手の中で合意を形成するというのは、プロジェクト進行だけでなく、製品の出来に必ず表れると思っています。途中で諦めなかったことが、私たちが自信をもって製品を送り出すことにつながり、お客様にも喜んでいただけることにもつながっていると確信しています。

(R.K.)製品が完成するのは喜びなのですが、もう一つ触れておきたいのは、このプロジェクトを通じて次世代のチーフを育てられたこと。開発を通じて僕の右腕になってくれた人物が、今、別のプロジェクトでチーフを務めてくれています。挑戦を通じて人が育つのは、当社のいい伝統ですよね。

(K.S.)チーフとして開発を俯瞰して、改めて他部署との連携が製品の品質を左右することを実感しました。周囲と相互協力の体制で製品の完成度を高めていけるのが当社の強みです。あと、今回苦労して一から書いたフラットベッド機用のソースコードが、今後は会社の資産として活用してもらえるということも、達成感がありますね。

(S.M.)どのプロジェクトでもそうですが、いろんな部署の方と一緒に仕事をしていて、当社には「本当にいいものを作りたい」という熱意を持っている人が集まっているのを再確認できました。まあ、その「いいもの」の定義が異なるとすごいバトルになるんですけど(笑)それだけみんながしっかりした理念を持って働いているということですよね。そうそう、私、先日「VersaSTUDIO BD-8」を使って子どもの箸箱に名前を入れてみたんですよ。すごく使いやすいし、「あんなこともできる」「こんなこともしたい」って、いろんなアイデアが浮かんでくる。

(K.S.)僕たち開発の人間は、営業部門の社員に比べお客様と直接触れ合う機会は少ないけれど、やっぱり自分たちが使いたい、ワクワクできるという製品を作ることは大事ですよね。それが当社のパーパス「世界の創造(ワクワク)をデザインする」につながるのではないかと感じます。これからは積極的に展示会などにも参加していきたいです。

最後に、これはローランド ディー.ジー.で日夜続いている挑戦の1エピソードにすぎない。今も社内のあちこちで、同じようなストーリーがつづられているのだ。